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法の改正についても一定の考察を行いたいと思う。

 

2.地方分権と市民参加

 

(1)問われる自治体の意思決定システム
都市計画や生活保護制度など福祉施策の具体的な事例を通して、基礎的自治体の役割の重要性が指摘される一方、情報公開制度の確立に伴い、自治体業務や公務員に対する一定の失望やある種の不信も生まれてきている。マスコミを通じて報道される「不正な食料費出張費の支出」や「政治家、高級官僚の詐欺・汚職事件」などの内容は象徴的なものであるが、「自治体の庁舎が豪華すぎる」とか「住民の意見を聞かない大規模開発」「人の命を救えない福祉の施策」などは、政策決定過程や政策実施過程における、市民と行政の双方の理解と協力が充分でない証左の一つである。自治体の制度としては、法律、条例に基づいて計画を策定し、その実施について、議会の議論・議決あるいは監査制度によるチェックなどの手続きを経たうえで、各事業を実施しているといえる。しかしながら、価値感が多様化し、タックスペイヤーとしての明確な主体性を持った市民にとっては「かゆい所に手が届いていない」施策部分が多いというのが実感ではないだろうか。
そこで、自治体の側からは、政権の保守革新を問わず住民のニーズを把握するための市民参加の推進が、課題として大きく取り上げられることになる。この問題を解決するためには、(ア)どのようなシステムで(イ)誰の声を聞き、(ウ)どこにそれを反映・実施し、(エ)だれがそれを評価するのかを検討していく必要がある。自治体にはまだ解答はなく、新しいシステム作りや既存の制度の改革に苦慮しているのが実情である。「首長への手紙、地域での懇談会・説明会の開催」、「計画作りへの市民会議・委員会の設置」などのしかけが行われているが、十分功を奏していないのである。この問題については後に「(b)計画行政への参加」で詳細に検討したい。
(a)町内会・自治会の現状
?@町内会・自治会と行政
そこでまず、住民のニーズを把握するために地域に存在する団体としての、町内会・自治会活動の現状と行政との関係について考えてみたい。
町内会・自治会の研究は戦後、多くの政治学者、社会学者によって行われてきた。最近

 

 

 

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